(1998/3/2 - 1998/3/8)
オレは目が点になった.
ゲシゲシッ!
景品が取れずにムカついた委員長が,ゲームの機械を蹴ったのだ.
「…げっ」
な,なんちゅうマナーの悪いやっちゃ.
すぐに店内から,バイトの店員らしい若い男が駆けつけてきた.
「こ,困りますっ,お客様っ」
だが委員長は,逆にその店員にかみついた.
「なんやのこれは!? 一回取っても,途中で落ちるやないの! こんなん,絶対取れへんやんか!?」
「…い,いや,そんなことないですよ.実際に取っていかれるお客様もたくさんいらっしゃいますし」
「嘘や! さっきから見とったけど,誰ひとりとして取れてないやん!?」
すかさず店員がツッコミを入れる.
「…そこまで見てたんだったら,最初からやらなきゃいいのでは…?」
オレの目は再び点になった.
ゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシッ!
痛いところを突かれてムカついた委員長が,店員を蹴ったのだ.
「…げげっ」
な,なんちゅうガラの悪いやっちゃ.
店員の哀れな運命に涙しつつ,オレはゲーセンから逃げ出した.
(1998/3/9 - 1998/3/15)
「…私に寄って来るんは,物好きな藤田くんくらいのもんや」
「そんなことねーって. 委員長って,クラス中の男子に人気あんだぜ? クールで知的なトコがカッコイイとかさ」
「……」
「でも,オレの意見は違うね. カッコイイってより,可愛い寄りだと思ってる. みんな見る目がないねー. 文章で「ツリ目がち」って書いてあるからだまされてんだ」
「……」
「その点オレは,いつもCGを壁紙にしてるから解るんだ. 実はどう見てもタレ目で童顔なんだよな」
などと.冗談半分本音半分でからかっていると….
「……」
「ん? どうした,さっきから黙っちまって…?」
「アホッ!」
顔を赤らめた委員長は,いきなりオレを置いて駆け出した.
(1998/3/16 - 1998/3/21)
委員長の胸はオレの想像以上に豊かで,大きかった. 力を入れると壊れそうで,オレは通常の半分以下の力で胸を揉んだ.
「お客さん,凝ってますねー」
「……」
「…いや,冗談抜きでかなり大きいな,こりゃあ. とても現役女子高生の胸じゃねーぞ」
「?」
オレも詳しいことはわかんねーけど,ただ,今からこれだけ大きいとそのうち垂れる可能性が…. 貧乳は嫌だが,垂れ乳もちょっと嫌だ. いやいや,でも垂れると決まったわけではないし….
…委員長の肩がちょっとこわばったような気がした. やべぇ.
(1998/3/22 - 1998/3/29)
「おい,まてよ」
オレは,追い越していく背中に言った. だが委員長は(フリなのか,ホントに聞こえていないのか)無視して先を歩いていく.
「おい,委員長ってばよ. なあ,おい,こらっ.聞こえねーのか!? 保科智子!」
それでも無視されて業を煮やしたオレは,すうっと深く息を吸うと大声で叫んだ.
「ほぉ〜〜〜,しぃ〜〜〜.なぁ〜〜〜,とぉ〜〜,もぉ〜〜〜…」
「そない大声出さんでも,ちゃんと聞こえてるっ!」
慌てて振り返った委員長が,大声で怒鳴った. だが,それはオレのシナリオのうちだった.
「…だぁ〜〜,ちぃ〜〜」
「…」
「…」
「…」
「…欲しいな,友達」
委員長は怒りで顔を赤く染め,口もとを結んで俯いた. 委員長の態度をほぐすための軽いギャグだったのだが,関西人にはちょっとベタ過ぎるネタだったか….
(1998/3/30 - 1998/4/5)
「そいつな,こともあろうに,この私本人に『イクラっていくらなの?』とか言うてきよった」
な,なんだってぇ!
「で,ど,どうしたんだよ!?」
「…思わずツッコミ入れて,鞄で思いっきりブッ叩いてもうた」
オレは,ほっ…と胸を撫で下ろした.
委員長のウケをオレより先に取ることは許されないのだ.